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Allometry for eyes and optic lobes in oval squid (Sepioteuthis lessoniana) with special reference to their ontogenetic asymmetry.

Sakurai Y. & Ikeda Y. 2022. Symmetry, 14: 644.

https://doi.org/10.3390/sym14040644

​ 眼のサイズは視力や光感度の増加に寄与しています。一般的には、成長に伴い体サイズの方が眼のサイズよりも相対的に大きくなるため、相対的に眼のサイズは成体よりも幼体のときの方が大きくなります。また体サイズだけでなく、視覚に関わる脳領域のサイズも眼のサイズと関連して増加していくと考えられます。

 形態的な左右差は多くの動物にみられ、成長に伴い左右差のパターンが変化していきます。しかし、多くの研究が単一の形態的特徴の左右差を調べており、2つ以上の形態的特徴の左右差がどのように関連して変化していくのかに関する情報は少ないです。

 アオリイカは成長に伴い遊泳能力が向上し、群れ行動を形成するようになります。脳サイズもそれに伴い変化し、視覚に関連する脳領域である視葉は左右差も変化していきます。そこで、眼と視葉のサイズが成長に伴いどのように変化していくのかを調べました。

 孵化後0-120日齢までの個体を経時的に取り出し、micro-CT (小型動物用CT) で頭部を撮影、その後眼と視葉の容積を計算しました。その結果、成長に伴って眼容積の左右差に偏りは見られなかった一方、視葉容積の左右差について、孵化後30日齢までは左右差がなく、そこから80日齢までは右視葉が左視葉よりも大きくなり、100日齢で再度左右差がなくなり、120日齢では左視葉が右視葉よりも大きくなる、という変化が見られました。つまり、眼と視葉の左右差は同調して変化するわけではないことが明らかとなりました。

 次に、眼と視葉のサイズが体のサイズに対してどのように大きくなるのか、いわゆる相対成長を調べました。その結果、孵化直後の日齢の個体の方がそれ以降の日齢の個体より、眼も視葉も相対的に大きい、つまり一般的な相対サイズであることが分かりました。また、孵化直後は視葉の方が眼よりも相対的に大きいですが、その後眼が急激に大きくなっていきました。

 以上の結果は、感覚受容と処理に関わる器官の間に非対称性が存在することを示唆しています。そのような変化は、孵化後の視覚環境の増加に適応しており、視力や光感度などを孵化後に向上させていると考えられます。

裏話

​ これは、4年ほど集めたサンプルを駆使して行った研究です。解析に相当時間がかかり、気力との勝負でした。視葉容積の左右差にみられた不可思議な変化に関しては、なぜそのように変化するのかは未だ明らかではありません。

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